この日は、Oodnadatta Trackの見所のひとつ、algebuckina(アルジェバッキーナ)橋でキャンプをした。
アンガスにおすすめされたポイントの一つで、眺めもよく、水があるので泳いだりもできるという話だった。
遠くからも橋がよく見える。

なんとも長大な錆びた遺構だ。
この橋は、夏見ると無駄に長いが、水が多い時期にはほとんど全体が川になるそうで、ずいぶんと景色が変わる模様。

開拓期に鉄道を通す苦労の大きさが覗える。
汽車が走っていた当時の写真。Oodnadattaの町にある博物館より。

荒野を走る汽車。国が違うが、西部劇のような世界観だ。

最初の汽車がOodnadattaに到着したのが1891年。
このときはOodnadattaは終着駅で、もっとも栄えた時期でもあった。
人口は500人、食料品店が3つ、医者が一人、民宿が2つ、ホテルが1つ、パン屋が2つ、果物屋と肉屋が1つ。それに鍛冶屋と大工が1軒づつ。
1927年に、Alice Springsへの線路延長の工事が始まると、「鉄道の最先端の栄光は終わった」と町民は悲嘆に暮れたという。
そして1980年代には、列車はこの鉄道を走らなくなった。

この橋はサウスオーストラリア州最長で、全長580メートル。
建設には350人が動員された。
ここまで人員を運ぶことだけでも大変な事業だっただろう。
汽車にテントや食料や水を積んで、何往復もしたに違いない。
完成したときの工員たちの感動は大きなものだっただろう。
みんなで酒樽を開けて大はしゃぎしたような姿が目に浮かぶ。

それも今はただの残骸で、観光客の目を楽しませることだけが唯一の役割だ。

長い、長い橋だ。
無理をすれば歩いて渡れなくもなさそうだが、柵もしてあるし、落ちて怪我でもすればこんな場所では命にかかわる。

この右手の奥、木陰のあるところにテントを張った。
毎日のことだが、暑さにやられていたので、水浴びができるポイントを探す。


水は、綺麗ではない。
水中には長い藻も生い茂っており、このときの僕は気持ち悪さが乾きを上回ってしまい、ついに川を泳ぐことはできなかった。
アンガスのお勧めを果たすことはできなかったが、そんなに後悔はしていない。
せいぜい頭と顔を湿らせるくらいで、水場からは離れた。
それでも、水と緑があるというだけでも安心感は大きく、とても居心地のいい場所だった。

緩やかな起伏を、荷物を降ろして軽くなったバイクであちこち探索もした。
ここでの一番の思い出は、ミルク色の夕焼けだ。

前日の夕方と何が違ったのか、まったく雰囲気の違う夕焼けだった。
湿度で光の屈折率が違うとか、そういうことなんだろうか。

空の広さゆえの、青から赤へのグラデーション。
写真には収まりきらない美しさを、頭を何回もぐるぐるさせて楽しんだ。


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