長いオフロードの入り口、Marree の町に到着

オーストラリア

教会をリフォームしたポールのお宅で待つこと数日、ようやくサテライトメッセンジャーが届いた。

これで冒険の準備は整った。

ポールとアネットにお別れをいい、お米やその他食糧なんかも頂いて、一路 Ooodnadatta Track での冒険へと出発だ。

Marree の町へ

最初の目的地は、Ooodnadatta Track 入り口の Marree という町。

ポールに、 Marree (マーリー)に住む知人を紹介してもらったため、あまり遅く着いても迷惑だろうと、時間を調整するために、町の手前で一泊。

夜空が綺麗だったので、夜景を撮る練習。

周りに光源になる街が無く、空も広く抜けているので、日本の星空とは随分違って見える。

翌朝、改めてMarree へ。

町の数十キロ手前から、すでに舗装は途切れている。

街路樹どころか、高い木の一本も無い荒野。

スピードを落として走っていると、なにやら動くものが。

エミュだ!!

バイクをとめて眺める。どうやらこっちにやってくるらしい。

反対側からやってきた4WDも、車を止めて彼らに見入る。

道路を横断したいらしい。

それはもう、ゆっくり、ゆっくりと、道路をわたっていくのだった。

それなりに距離はとっているが、こちらを警戒する様子は微塵もない。

おかげで写真もとれたし、たっぷり彼らとの出会いを楽しむことができた。

Marree に到着

Marree は西部劇に出てくるような、乾いた土の上にそのまま家屋が立ち並ぶ町だ。

Oodnadatta Track の主要な駅ということで、列車が記念碑のように町の中心に飾られている。

鉄道はAdelaideの南まで延びていた。

紹介してもらった宿の主人を訪ねると昼寝をしているということで、声をかけた50代くらいの女性と話をさせてもらった。

目的としては、Ooodnadatta Track を走る際の心得を聞くことだ。

過酷な環境で生きているからか、目つきが鋭く、表情も厳しい人だった。

僕のように、このオフロードを走る旅行者を多く世話してきたようで、彼らの失敗談も含めて貴重なアドバイスをもらうことができた。

  • GPSを過信しないこと。電波が届かないことが稀にある。過去にGPSしか用意しておらず迷って死ぬ直前までいった事故があった。
  • 地図を必ず持つこと。ところどころ位置を示す標識があるので、常にGPSとは別に場所を把握すること。
  • 主要路から外れないこと。ただでさえ人通りが少ないのに、わき道で往生すれば誰も助けることができない。
  • タイヤの空気圧は下げ、重いものは低い位置に積むこと。特にバイク乗りは水を荷物の一番上に積むが、これが一番危ない。重心を低くすることが肝。

キツい態度とは裏腹に親切な人で、エピソードも織り交ぜながら丁寧に時間をとって教えてくれた。

まぁ、赤の他人とはいえ、関わってしまった以上は、無謀なことをして死なれては寝覚めも悪いし、事件となれば手間にもなるから、ということもあるだろう。

得にGPSのくだりは、簡単に言っても信じない人が多いと思われる。

死にかけた若者の話を、「あのバカが」と何度もこき下ろしながら、しっかり僕に荒野の恐ろしさを植え付けてくれた。

結果的に僕のGPSは狂うことは無かったし、今でもそんなことはそうそう考えられないという気持ちだが、ここで生きてきた人の忠告を無視して怪我をするほど馬鹿らしいこともないわけだ。

Marree という町について

その後、この女性アンは僕の好奇心からの質問にも答えてくれた。

この町は、見た目だけでも the 僻地!!という感じなんだが、何がすごいって、警察官がいないのだ。

警官は人数に応じて配備されているようで、この町を担当する警官の担当範囲は、端から端まで、車で1週間もかかるほど広い。

だから、この町の人たちは、泥棒が出たら自分たちで捕まえて、ふん縛ってしまう。

そりゃあ逞しくもなるってもんだ。

水は湧かないので、とても高い。

トラックで運ばれてくる水に頼るしかなく、500mlのペットボトルで10ドル近くしていたように記憶している。

日中は気温が激しく上がるため、仕事は早朝と夕方にする。

僕の尋ね人が昼寝をしていたというのもそういうわけだ。

なんでここに住んでいるのかも聞いてみた。

このアンは、元は証券会社かなにかで働いていたバリバリのキャリアウーマンだったそうだ。

その後結婚し、子供を育て上げ、家庭に束縛されなくなったので、旅に出た。

この町にたどり着いて、僕の尋ね人の元で働くうちに、この場所が大好きになってしまったのだという。

昔ながらの生き方や人間関係なのか、気候風土なのか、正確なところはわからない。

ただ、彼女のボスである宿の主人の存在も大きく影響しているということだった。

住みやすさというだけなら、メルボルンなり他の大都市なり、あるいはリゾート地なり、もっといいところがいくらでもあるだろう。

この町で育ったからこそ身に付く価値観や人柄というものが、彼女を惹きつけたに違いない。

今振り返れば、町で一泊していけばまた別の出会いもあったかもしれない。

しかし、ポールのところで足止めされていたこともあり気が逸っている僕は、そのまま荒野へとバイクをすすめていったのだった。

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