自然公園で、不運のライダーと出会う

オーストラリア

国立公園の案内もいろいろ読んで、オーストラリアという国のことも少しずつわかってきた。

動物達に会えないかなぁなんて期待を膨らませながら、駐車場に戻って地図を確認したりしていると、向こうから旅支度のバイクがやってくる。

どちらからともなく「Hi!」と一声、そこから自然に会話が始まった。

オーストラリア人の気さくさ

日本だと、道の駅なんかでバイク乗り同士が出会うことはよくあるけど、特別喋ったりしないことの方が多いと思う。

もちろん、がっつり旅の格好している人と休日にひとっ走りの人では、話しかけやすさも違ってくるだろう。

だけどオーストラリアの人達は、気安くて人懐っこい。

僕が思うに、自然が厳しすぎることや土地が広すぎることが、大きく関わっている。

オーストラリアの面積は日本の20倍。

これに対して、人口は1/5しかいない。

僻地では他の人に偶然出会える確率というものがとても低く、自然の中でのトラブルが死と直結している。

だから、人を見ればまず「大丈夫かな?」と気遣う。

気遣われ慣れてもいるから、心配をさせないための朗らかさもある。

彼らのこういう人柄こそが、オーストラリアでの思い出をいいものにしてくれているんだ。

出会ったバイク乗りのお兄ちゃん

このお兄ちゃんリアムも気持ちのいい人で、旅の目的地の話をしていると、すぐに日本でいうツーリングマップルのような本を見せてくれたりする。

メルボルンの本屋さんで、こういう走って楽しいルートを紹介しているような本を尋ねたこともあったんだけど、誰も知らなかったんだよなぁ。

「やっぱりあるじゃん!」

餅は餅屋と言うやつで、バイクのことはバイク乗りに聞くのが一番だ。

リアムも、休みをとって長めの旅をしているらしい。

北から降りてきたということで、「もうお別れかな、名残惜しいな」なんて思っていると、「お前が走るルートまだ走ってないから、一緒に行こうよ」なんて言ってくる。

断る理由なんてあるわけもない。

アンガスと待ち合わせている Palachilna のバーまで、一緒に走ることになった。

Flinders Ranges 国立公園内を走る

しばらく舗装路を走っているとすぐに舗装は終わり、楽しいオフロードが始まる。

リアムのバイクはオフを走るような仕様ではないはずだが、急加速を入れて遊んだり、スリップにビビる僕をすぐに引き離したり、軽快な走りを見せる。

聞けば、彼は小さい頃からオフロードの競技をやっていたらしい。

僕はバイクの装備のおかげで走れているが、彼はバイクの能力以上にテクニックで走っていたというわけだ。

手加減をしてもらって、怪我なく事故なく、一緒に走ることを楽しむ。

展望台で写真を撮ったり。

渓谷でバイクをとめて、散策をしたり。

インフォメーションセンターでは、何百万年前の地層が隆起しているなんて読んだりもしたから、「この赤いのがそうなのかなぁ」なんて思いを馳せてみたり。

いつ振り返ってもいいもんだ。

でも実は、この後とんでもないことが起きる。

僕ではなく、リアムの身に。

(ところで、虫除けのネットをかぶっていることから、この時点でハエに悩まされていることがわかる。人間なんでも慣れるもので、後半は僕もネットを使わなくなったけど、顔に何匹ものハエを止まらせながら笑顔で会話できるようになれる自信がなければ、アウトバックには行かない方がいいかもしれない。)

マシントラブル

ここまで挙げた写真を見れば、オフロードといっても大した難易度ではないことは分かってもらえると思う。

この道に唯一問題があったとすれば、乾いた川床を道が横切るので、石を踏む場所があることだ。

石をタイヤが踏めば、その石は跳ね上がる。

そして、リアムのバイクには、エンジンガードが付いていなかった。

結果石がエンジンを直撃し、500円玉よりも大きな穴が開いてしまったのだ。

現場はここ。幹線道路まで20km、バイクを押して行けるような距離ではない。

倒れたバイクに、地面に広がる黒いエンジンオイル、エンジンにぽっかりあいた大穴。

もちろん携帯は圏外。

下手をしたら命にもかかわる。

このときのリアムの絶望の顔といったら、言い表しようもない。

バイクも大事だろうが、せっかくお金を貯めて休みもとったのに、それらがぜんぶ台無しだ。

しかも、頼りは言葉もカタコトの、その日会ったばかりのよくわからん国の人。

あぁ、かわいそうに。

バイクの腕があるだけにスピードが出せてしまった。もっとゆっくり走っていたら、跳ねる石の勢いも弱かっただろう。

そして、彼の運命は僕に委ねられることになった。

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