リアム救出作戦

オーストラリア

さて、バイクがお釈迦になったリアムを、何とかしてあげなければいけない。

幸いなことに、この後すぐにアンガスと会うことになっている。

彼に相談すれば、何かしら手を打つことができるだろう。

リアムはテントを持っているということだったので、4 L のウォーターバッグだけ渡して、アンガスと待ち合わせしているパラチルナのバーまで向かう。

パラチルナで助けを求める

パラチルナへ着くと、すぐにアンガスを見つけることができた。

辺りは随分と薄暗くなっているのに、遠くに夕焼けが見えている。

不思議な感覚だ。

再会を祝してビールを飲みながら状況を説明すると、アンガスはバーのマスターにそれを伝えてくれた。

多分、そこから話が広がり、いずれリアムが助かることになるんだろう。

マスターには「君は命の恩人だね」などと言われたが、まだ何かが手配された様子もない。

しかしアンガスもマスターも、慌てた様子は全くない。

そのくらいのことは日常茶飯時ということなのだろうか。

リアムを心配する気持ちはありつつも、彼らの雰囲気に安心し、他の客とも雑談しながら荒野のバーでのひとときを過ごす。

その中に、トラックにオフロードバイクを積んだ親子がいた。

20代くらいの息子の方がいつか日本に来たいと言って、彼と日本のことを楽しく話したことを覚えている。

結果的に、彼ら親子がリアムのバイクを運んでくれることになるのだが、その時の僕はまだそれを知らないのだった。

アンガスとキャンプサイトへ

「ビールを飲んじゃったけどこの後どうするのかな」と思っていたら、アンガスが「お気に入りのキャンプスポットがあるから」と移動することになった。

「日本よりも、飲酒運転に対する忌避感がゆるいんだな」と一瞬思ったがそれもそのはず。

この辺り、地平線の先から先まで、車1台も目に入っていないことの方が多い。

「何を気にすることがあろうか」という程度の感覚だろう。

何よりビール1、2杯であれば法律も犯していない

既に日は落ちていおり、暗い中でのオフロード走行に不安もあったが、アンガスが先導してくれたおかげで無事にキャンプ地までたどり着いた。

1 メートル幅ぐらいの小川を、初めてバイクで乗り越えたりもした。

アンガスがまず、自分のバイクで安全に渡れるかどうか試してくれる。

それから、僕のヘビー級のバイクでつっこむ。

誰かが見てくれているというのは本当に頼もしいものだ。

この時の僕はオフロードどころか、バイクに乗ること自体が初心者なのだ。

初めてバイクを買ってから、国内走行わずか5000 km でオーストラリアに来ている。

だから、こうやって経験を積ませてもらえることは本当にありがたい。

そうして小さな小さな冒険を終え、適当な広場にテントを張り、日本から持ってきたウイスキーをアンガスと飲む。

話している相手はアンガス一人だが、こうしているとオーストラリアという国そのものに受け入れられている気がしてくる。

そしてこれがバイクならではの出会いだということも、また気分を盛り上げる。

こういう酒は、ほんとうに美味い。

リアムの問題はあるにせよ、僕がどれだけ旅を楽しんでいるか、出会いというものに興奮しているかが、少しでも伝わればと思う。

余談だが、彼のキャンプスタイルは本当にミニマルだった。

食事はこのオートミールのような何かの穀物を、お湯で戻すのみ。

この南米原産の穀物 Red Quinoa (キヌア)は、炭水化物を主としてたんぱく質や繊維も豊富に含むほか、ミネラルも豊富に含んでいるようだ。

十分な栄養の確保しにくい長旅には、確かに理想的な食糧かもしれない。

またリンク先によれば、ふわふわもちもちと書いてある。調理方法によっては美味しくいただけそうだ。

アマゾンでもキヌアが買えるらしい。今度買ってみよう。

そしてテントに至っては、もはやテントではなく蚊帳のようなものを使っていた。

写真がないのが残念だが、自分の体ほどしか面積のないその蚊帳の、てっぺんだけ紐でバイクに引っ掛けているだけなのだ。

その場所は羽虫がとても多く、明かりをテント内に入れていたせいで10匹以上の羽虫に侵入されてしまった僕よりも、よっぽどぐっすり寝ていた。

コット(簡易ベッド)やダッチオーブンを運んでいる僕としては、「もっと荷物減らせるよなぁ」などと思わされたものだ。

バイクでキャンプツーリングをする人は、この荷物の厳選については共感してもらえるのではないだろうか。

この頃は、1カ国目と言うこともあり、まだまだ余計なものをたくさん積んでいるのだ。

翌朝、リアムの様子を見に戻る

アンガスにはほっとけばいいじゃないかと言われたが、リアムの元へ戻ることにした。

戻るという約束もしたし、ウォーターバッグも預けぱなしであることだし。

ともあれ一息つこうと一旦二人でパラチルナへ戻っていると、昨日のバイクの親子にすれ違う。

(これが彼らの言うトラック。日本の軽トラみたいなのは走っていない。)

このときも、リアムを助けてくれるような話はなかった気がするんだよなぁ。

彼らは彼らで、目的のバイクの練習かなにかをやりに行ったんだろう。

パラチルナで一服。

今後の僕のルートの相談に乗ってもらい、ハグをしてアンガスとはお別れ。

そしてリアムの元に戻ると、なんとかわいそうに、風が強すぎてテントを張れなかったと言う。

「そっちは良いキャンプができたみたいでよかったな!」

と痛烈な皮肉。彼の気持ちを思えば反論するのもかわいそうだ。

「蟻んこどもが、俺の腕を通学路にしてるんだよ、わかるか?」

辛いことを冗談にしてしまうのはオージーなりの逞しさかと、感心したりもした。

とりあえず彼の無事(!?)を確認し、ガレージでもないかと走り回っていると、リアムからメッセージが届く。

ここでようやく、トラックの親子が彼を救ってくれたことを知る。

結局、行きに通った Hawker の町のガレージにバイクを届けてもらったそうで、貸してあったウォーターバッグを受け取りに Hawker へ向かう。

やれやれ。結局アンガスの言うとおり、放っておいても彼は大丈夫だった。

僕が何の役に立ったわけでもない。

それでも、大事なくてよかった。

リアムは「二度と Flinders Ranges には行かねぇ!」と、悔しさ全開だった。

そんな減らず口がきけるのも、元気な証拠だ。

エンジンガードも、ガレージでしっかりつけてもらうそうで、後顧の憂い無しとなり、彼ともお別れ。

そして僕は、Oodnadatta Track へ向かうための装備を揃えに、Port Augusta の街へ向かう。

この日のキャンプ地は、写真の爽やかさとは裏腹に、車道が近くていまいち落ち着かなかった。

とはいえ木陰や茂みは山ほどあるので、車道から見えない場所に落ち着く。

この日も無事に一日が終わった。

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