さて、僕の当面の目的は、アンガスに教えてもらった Oodnadatta Track を走破すること。
そのためには、サテライトメッセンジャーという、携帯の電波が届かないところでもSOSを送れる道具を手に入れなければならない。
ということで、このあたりで一番大きな街、Port Augusta に向かう。

気さくな家電屋さんのご主人
グーグルマップで電気屋さんを探す。
日本のように、ビックカメラかヨドバシカメラかというような、電気屋さんの名前を知らないので、地図に載っているものをシラミ潰しに当たる作戦だ。
これまた運が味方をして、1件目で用が足りることになった。

そこは個人で営んでいるお店で、家電屋と言うよりは雑貨屋に近かった。
お皿やスプーン・フォークに、花瓶に、雑多なものが置いてある。
奥の方に電子機器も置いてあるので、サテライトメッセンジャーのことを聞いて見ると、3種類ほど取り扱っていた。
本体価格プラス月額いくらという、携帯電話のような料金体系なので、どれが安いんだとか、今後の旅のために、オーストラリア以外でも強いのはどこのメーカーだとか、質問を重ねていく。
店主のおじさんは好奇心旺盛な瞳の輝きをもつ人で、
「どこから来たんだ、どこに行くつもりなんだ」
と、人対人の会話を始めてくれた。
Oodnadatta Track に行きたいんだというと、
「タイヤはどんなのを履いてるんだ、見せてみろ」
といって僕のバイクを見に店外まで出てきたりもする。
名前を呼び合うコミュニケーション
会話をしていくうちに、僕の年齢もきれいに言い当ててきた。
僕は日本でさえ若く見られるタイプだ。
加えて白人から見る東洋人も幼く見られがちであるから、彼らが僕の歳を正しく読むには根拠がなくてはならない。
そこで理由を聞いて見ると、
「見た目は20台だけど、話し方が違う」
”You look 20’s, but sound more mature.”
とのことだった。
同年代の息子さんもいるとのことで、随分と親しみを持ってくれたようだ。
初めて買う品物ということもあり、2時間くらいは吟味していたが、椅子を出してくれ、コーヒーも出してくれ、ゆっくりと付き合ってくれた。
品物を決めて納期を聞くと、数日で届くとのことなので、早速契約。

決めたのは、この inReach だ。結局使うことはなかったが、今振り返っても必要な買い物だった。
契約にはオーストラリアの住所が必要だったりもしたのだが、なんと彼ポールは、自分の住所を提供してくれた。
(こうして公開しちゃっているけど、これはオフレコだ。奥さんのアネットが渋っていたのも良く覚えている。当然の警戒心だし、それも彼らの寛大さを物語っている)
そして、「今日はどこへ泊まるんだ」と、ポール。
まだ夕方だし、いい場所が見つからなければ今朝の場所へ戻ればいいと思ってはいたが、そんなに戻りたいわけでもない。
正直にそれを伝えると、
「一人がいいならこの店の裏に泊まればいいし、もしそうしたいなら、私たちの家に泊まっても構わないぞ」
なんて言ってくれる。
否やのあろうはずもない。こんな触れ合いが、したかったんだ。
ポール&アネット宅へ

二人の棲家は、古い教会を買い取ってリフォームしたものだ。
「すぐわかるから」と言われたが、本当にすぐ分かった。
教会というだけで目立つのに、こんなに可愛らしいモノが家だなんて、見過ごせるはずがない。

曇り空の写真しかなく残念だが、本当に粋な住まいで、贅沢をするよりこんな暮らしがしたいと思わせる素敵な空間だった。
この夫婦は夫婦別姓で、
「ご近所に何か言われたら、ポール&アネットの友達だと言えば大丈夫だからな」
などいろいろと僕が心配になりそうなことを先回りしてくれるあたり、客を招きなれていることが窺える。
何日も泊まらせてもらったのでタイミングが定かでないが、このときに鍵の隠し場所を教えてもらったように記憶している。
「店を閉めるまでまだ時間がかかるから、先に行っていろ」という流れだったはず。
ちょっと日本では考えられない。そんな経験をした人がいたら教えて欲しいくらいだ。
どれだけ初対面の客を信用してるというんだ。
僕にはちょっと考えられない。30年後、40年後にそうなれている気すらしない。
内装はあまり公開してしまうのも彼らに悪いので、一部だけ。
小さくはあるが、協会だけに天井が高く、そこをリビングにしている。
もう、開放感があるなんてレベルじゃない。居心地が良すぎる。
天井の高さを感じてもらえるだろうか。

窓なんか、ステンドグラスだ。

結局ポール&アネット宅には、注文したサテライトメッセンジャーが到着するまでお邪魔させてもらうことになった。
売主としての責任を感じてもいたのかもしれない。
もちろん、これもありがたく甘えさせてもらった。
二人に甘えて気ままに過ごす
料理上手のポールに料理を教わったり、アネットに趣味のモザイク作りを見せてもらったり。

「楽しい」という言葉が霞むくらい、楽しく過ごさせてもらった。
日中は、教えてもらった国立公園や展望台に遊びにいった。


Red Hills だかなんだかと言う地名から、夕日ハントに行ったりもした。



そして夜は毎日、にぎやかに和やかにご飯。
人と頂く食事ってものは、それだけで違うもんだ。
酒も、ビールを飲んだりウイスキーを飲んだり。
ビールがぬるくならないためのホルダーをお土産にもらったりもした。

これ、ホントに冷たさの持ちが違うので、ビール好きな人は探してゲットするといい。
「ネオプレン クーラーホルダー」で探せる。
僕はアマゾンの大ファンなのだけど、アマゾンにはあんまりオススメしたいものがなかった。

米も箸もあるあたり、さすが料理通だ。
旅行が好きで、いろんな国に出かけては料理教室に行くのがポールの楽しみ方。
彼にとっての旅は「知ること」で、料理教室なら、料理も人柄も知ることができて一石二鳥なのだ。
僕が作るキャンプ飯もまずいわけではなく、概ね毎日ウマイウマイと喰らってはいた。
でもやはり、本格派の人が作る料理には敵わない。
まだオーストラリアを走っていくらも経っていないが、舌を楽しませてもらい、栄養状態整えてもらい、心身ともに癒されていた。
何より、彼らの温かい人柄に触れられたことが宝物だ。
お友達夫婦が訪れて、5人でにぎやかな晩餐なんていう日もあった。
その二人も、僕の旅をとても励ましてくれた。
ワンコもいて楽しかったな。
死ぬまでに行かなくてはいけない所が、たくさんできすぎてしまった。
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